バイオベースマテリアル学専攻
サスティナブル材料合成化学研究室
Research topics
1.圧力可塑性高分子
圧力変化により相転移する高分子多相系はバロプラスチックと呼ばれている。特に二相系は詳細に検討されており、室温より低いガラス転移温度と高いガラス転移温度を有する高分子からなるブロック共重合体で、室温付近で加圧により流動し成形できるものがある。これは常温常圧で相分離(固体)状態の共重合体が、加圧により相溶(流動)状態へ可逆的に相転移したためである。このような常温成形可能な高分子材料は、成形加工の省エネルギー化とそれに伴うCO2排出削減のみならず、従来の溶融成形時に生じる高分子鎖の熱分解に起因する物性低下を抑制することも可能である。よって、リサイクル性の向上も同時に達成できる。また、再生可能資源由来の分解性バロプラスチックの開発にも成功し、環境負荷の低減と持続性の向上も可能にする次世代の機能性高分子材料として期待されている。
当研究室では、バロプラスチックの圧力誘起相転移メカニズムの解明や、新規機能性高分子材料としての展開について研究開発を行なっている。
2.CO2分離回収技術
地球温暖化および気候変動は我々が直面している深刻な問題であり、その原因である大気中CO2濃度の上昇を食い止める方策として、CO2回収貯留技術(CO2 Capture and Storage, CCS)が検討されてきた。ここで、分離回収したCO2を地下あるいは海底下に貯留するCCSと比較して、CO2を有価物に転換するなどの有効利用(CO2 Capture and Utilization CCU)が最近着目を集めている。これらの技術の実用化には、コストの大部分を占めるCO2分離回収の低減が必須である。つまり、効率的なCO2分離回収技術を確立することである。これまで種々のCO2分離回収技術の研究開発が行われており、中でも膜分離法は次世代の省エネルギー分離回収技術として期待されている。
本研究室では、膜分離法を中心としたCO2分離回収技術の研究開発を行なっており、CO2選択透過メカニズムの解明を行い、その知見を生かして世界トップレベルのCO2分離性能を示す高分子膜材料の研究開発に成功した。また、極めて簡便な手法で分離膜モジュールを作製する技術を確立し、膜分離法によるCO2分離回収技術の実用化を目指している。